![]() | たかが捻挫とあなどるなかれ 美唄市医師会・飯坂英雄 |
下肢の捻挫の中でもっとも多いのは足関節(足首)の捻挫で、外くるぶし(直前・直下にある2本の外側靱帯)
を痛める場合が多いです。昔は程度を考えず湿布だけでの治療でした。近年、捻挫(靱帯損傷)の程度によって
一度から三度まで分類されています。一度は靱帯の部分損傷で腫れや皮下出血が軽く、受損後体重をかけても
痛みがほとんどないか軽い場合で、特に問題なく1〜2週間で治ります。三度になると腫れや皮下出血が強く
痛くて立てないほどの症状のほかに、関節に不安定性が出現します。二度はその中間で区別が困難です。
三度の治療については、積極的に断裂部を縫う手術派とギブス、装具などで保存的に治療する二派に議論が
分かれています。おおむね若いアスリート(競技選手、スポーツ愛好家)は手術で損傷部を縫合するのが予後
良いとされています。成長期や普通の生活を送る成人では、ギブスや固定装具で治療しますが、靱帯の損傷が
治癒するのは3〜4週間くらいかかります。初期治療がなされないと何度も捻挫を繰り返し、いわゆる「くせ」
になります。骨同士を繋いで手網の役割をしている靱帯がのびたり切れたりすると関節の安定性が失われるため
です。「くせ」になると長期的には関節軟骨に損傷が生じ、腫れや痛みや動きが悪くなる変形性関節症になるこ
もあります。不幸にして「くせ」になり生涯スポーツを愛好したい成人には靱帯を再建して不安定を治す手術
もあります。捻挫ごときとあなどらないで、まず ICE療法(I=iceing・・冷やす、C=compression・・適度の圧迫、 E=elevation・・患部の高挙) を行い、心配でしたら早めに整形外科にかかることをおすすめします。 (筆者紹介/市立美唄病院整形外科) |