一般社会生活を営む人に発症した肺炎(市中肺炎)の原因菌としては肺炎球菌が多く、インフルエンザ菌
、マイコプラスマなどがこれにつぐ。これらの菌を臨床現場で検出できる確率は低く、50%に満たないことが多い。
また細菌検査の結果が判明するまでには数日を要するので通常は経験的に原因菌を推定し投与抗菌剤を決める。
一般的には抗菌力の強さ、有効菌種、副作用などからβラクタム系(ペニシリン系およびセフェム系)薬剤が
使用されることが多い。使用抗菌剤が有効であれば、投与開始後2〜3日で症状の改善が認められるようになる。
しかし、最近このβラクタム系薬剤が無効な場合が目につくようになった。その原因の1つがメチシリン耐性黄色ブドウ球菌
(MRSA)である。この菌は現在使用されているほとんどの抗菌剤に耐性であり、それゆえに院内感染の主役を演じてきた。
しかし最近入院歴のない本来健康と考えられる人の市中肺炎の原因菌として検出されることがある。
このような場合、MRSAと判明するまでには結果的に効果があまり期待できない治療を行わざるを得ないため、ジレンマに陥る
こともある。もう1つは肺炎クラミジアである。この菌はマイコプラスマと同様細胞内寄生性であるため、細胞内への移行率の
高い薬剤以外は無効であり、βラクタム剤も同様である。当院でも最近3例ほど経験している。咳、痰などの気道症状が長引く場合
、別の原因菌の可能性を考えた検査のやり直しが非常に有効なこともある。おかしいと思ったら早めに受診するように心がけてください。
(筆者紹介/花田病院)
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