アトピー性皮膚炎と食物アレルギー
美唄市医師会・小林 一郎

食物アレルギーは「食物によって引き起こされる抗原特異的(特定の原因物質=ここでは食物のみに反応する)な免疫学的機序(きじょ)を介して生体に不利益な症状が惹起(※じゃっき)される現象」と定義されます。
原因物質に対して体内で作られ免疫反応を起こすタンパクを抗体と言いますが、検査で行われるIgE抗体というのはアレルギーを引き起こすタイプの抗体です。 食物アレルギーの原因としては乳児期には牛乳、離乳食が始まる頃には卵や小麦が増えてきます。その後は魚などが増加し、最近はナッツアレルギーが増えてきています。
食物アレルギーの患者さんは原因食物を食べると15分から1時間くらいの間に蕁麻疹(じんましん)や鼻水・咳、ひどい場合には激しい腹痛、呼吸困難、血圧低下などのいわゆるアナフィラキシーショックという状態になることがあります。 治療の原則は、必要最低限の食物制限ということになります。ある食物に対するIgE抗体が陽性でも食べて大丈夫な場合も多く、その場合は食物アレルギーと考える必要は無く食物制限も不要です。
また、アレルギーには閾値(いちき)(これ以上摂取すると症状が出る量)というのがあり、閾値以下の安全量で摂取することが必要です。
ただし必ず医師の指示の下に量を決めてください。
シラカバ花粉症の患者さんがリンゴなどバラ科果実を食べると唇が腫れたりのど咽がかゆ痒くなるなどの口腔(こうくう)アレルギー症候群という特殊型も存在します。 アトピー性皮膚炎の患者さんでは皮膚に食物が付着した時には口から食べたときと異なる免疫反応が生じてしまい、その後、口から摂取したときに食物アレルギー症状を起こしやすくなることが知られています。
以前は食物がアトピー性皮膚炎の原因ではないかと言われていましたが、現在は多くの場合アトピー性皮膚炎が食物アレルギーの危険因子と考えられるようになってきています。 赤ちゃんの時からのスキンケアや、アトピー性皮膚炎に対する適切な治療が、食物アレルギー発症予防の観点からも重要です。
※・・・問題などを引き起こすこと
(執筆者紹介/市立美唄病院小児科医師)