白内障手術の歴史
美唄市医師会・佐藤 克俊

白内障手術は見えなくなってから、という話を聞くのですが眼科的には30年以上前の情報になります。白内障は眼内の水晶体が混濁する病気です。
手術以外では治癒できず、放っておくと緑内障を起こして失明に至る場合もあります。 白内障の進行による緑内障には2種類あり、一つは水晶体が膨化(ぼうか)して虹彩(こうさい)を圧迫して起こる閉塞隅角(へいそくぐうかく)緑内障、 もう一つは膨化した水晶体が破裂して起こる水晶体起因性緑内障があります。 白内障手術は紀元前800年頃には混濁した水晶体を眼内に落下させる手術が行われていたということです。
しかし術中、術後に水晶体起因性緑内障を発症しやすく、閉塞隅角緑内障のリスクも残ったままで強度の遠視になるという問題がありました。
18世紀になると緑内障のリスクを減らすため水晶体摘出術(切開創13mm)が考案されました。緑内障のリスクは減りましたが強度遠視の問題は残ったままでした。
19世紀には嚢外(のろがい)摘出術(切開創11mm)、眼内レンズの原型が考案されましたが一般化はしませんでした。 1970年代頃に嚢外摘出術と眼内レンズを組み合わせる手術が開発されましたが、術後炎症が強く乱視が増悪するという問題がありました。 白内障手術は見えなくなってから、というのはこの頃の情報になります。
1980年代以降超音波乳化吸引術(切開創6o)が発達しましたが、進行した白内障に対しては水晶体起因性緑内障のリスクが高くなるという欠点がありました。 そのため従来より早いタイミングで手術を行うほうが結果良好となりました。
2000年代に入りさらに機器、用具が発達し現在では3mm以下の切開が主流となり、乱視の問題も少なくなってきています。
少しでも安全に手術を受けたいという方は早めにご相談ください。
(執筆者紹介/びばい眼科クリニック院長)