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今こそ、がん検診を受けましょう 美唄市医師会・齋藤 克憲 |
先ごろ、NHKのニュースで、今年全国で早期がんの手術が3割減っている、という報告がありました。
もちろん今年だけ突然がんの発生が少なくなったわけではありません。 コロナ禍でがん検診を受ける人が減ったためです。 その結果どうなるか?来年以降、進行がんの患者さんが3割増える、ということです。 もうこの美唄でも影響が出始めています。今年後半から、ゴリゴリの進行がんの患者さんが増えてます。 初診の段階で、もう手術ができないのです。 「手術ができない」というのはどういう意味か、皆さんわかりますか? 「手術が難しくて取れない」のではありません。 実は、手術の手技というのはある程度完成されています。切り取るだけなら、無理をすればたいてい取ることはできます。 問題は、「その手術でがんが治るのか?」ということなのです。 がんが恐ろしいのは、「転移・再発するから」です。 10時間以上の大手術をして、多くの内臓を切除してやっとの思いで手術を乗り越えても、 1〜2カ月後に全身から転移がニョキニョキ出てきたらお手上げです。 体力も使い果たしているので抗がん剤も使えません。 これでは何のための手術かわかりません。 「手術は成功したが長生きしなかった」今から10年以上前くらいまで、 「外科医の腕試し」のような拡大手術が存在し、成功例が華々しく紹介される影で、術後に持ちこたえられなかった症例が数多く存在したのも事実です。 かく言う自分も大学病院時代、限界に挑戦する日々でした。 ただそれは「手術するしか方法がなかった」からでもありますが。 今のがん治療は手術だけということはほぼありません。 「手術で治りそう」というものにはまず手術、そして転移・再発を抑えるために抗がん剤を手術の後に追加してトドメを刺しにいく、これでワンセットです。 問題はコロナ禍のせいで「手術しても治りそうもない」ところまで進行してしまった患者さんが増えている、ということなのです。 このような人たちは最初から抗がん剤治療になります。 もう全身に散らばっているため、一部だけをとっても「意味がない」からです。 そして抗がん剤治療だけでがんが消える事はほぼありません。 症状が出たときは、すでに「進行がん」なのだ、ということを繰り返します。 治るうちに見つけるには、無症状の内にがん検診を受けるしかないのです。 (執筆者紹介/北海道せき損センター第一外科部長) |