腎臓の話1
美唄市医師会・田中 康夫

今月と来月は私どもが行っている血液透析に関連して、腎臓の話をします。
そもそも腎臓は血液をろ過して老廃物を排出する仕事をしています。
その主役は糸球体(しきゅうたい)というフィルターです。糸球体は腎臓1つに100万個、左右で計200万個あります。
毎日24時間休みなく血液をろ過して尿を作り体外に排出しています。
その機能が破綻すると毒素が体外に排出されなくなるため人は生きていけません。
その糸球体は直径0.1mm程度の毛細血管のかたまりのような組織ですが、人間の臓器の中で最も精巧にできた器官のひとつです。
そのため、一度壊れると再生することができません。尿が作られる際に最初にできるものは「原尿」と言って、文字通り尿の元となるものです。
人間は1日に1.5リットルから2リットルのおしっこをしますが、原尿はなんと百数十リットルにもなります。 なぜ大量の原尿が作られるのに、おしっこが1日に1から2リットルなのか、それは、原尿の水分の大部分がもう一度吸収されてリサイクルされるからです。
このリサイクルシステムが破綻して原尿を全て排出してしまったら、体内の水分はあっという間に失われて人体は崩壊状態になります。
このリサイクル機能を請け負っているのが尿細管という組織です。要するに腎臓では糸球体と尿細管がそれぞれの役割を果たしながら、 「体内で生産された老廃物は全部出すけど水分は全部出さない。」という状態を保っているのです。
どちらのシステムが破綻しても人間は生きていけません。
(執筆者紹介/市立美唄病院医療技術部長)