矯正治療の開始時期
美唄市歯科医師会・工藤 泰裕

矯正治療は早すぎても遅すぎてもいけません。
適切な時期があるので、矯正歯科に明るい歯科医師に相談するといいでしょう。
今回は矯正治療を受ける上でふたつの点について述べます。
まず早期治療について。一般的に乳歯列の矯正治療は必要ありません。
この時期の小さな身体は成長発育が旺盛(おうせい)で、不正咬合(こうごう)の原因の特定は困難だからです。 治療は原因にアプローチしてこそ、有益な効果を発揮します。
したがって、原因が特定されないまま、曖昧(あいまい)な治療を受けるべきではありません。 次に重要なのは原因の特定です。
これは患者側では分からないので、考えるヒントを提案します。
すなわち、その行いが「道理にかなっているかどうか」に照らし合わせると、治療の良し悪しの判断になります。
そこで、顎(あご)の拡大は是か非かについて考えてみます。 不正咬合の状態や程度に関わらず全症例に対し、急速拡大装置を使用する場合です。
原因のいかんに関わらず、なんでもかんでも顎を拡大するのは、道理にあっていると言えるでしょうか。 本来狭くない上顎骨(じょうがくこつ)に急速拡大装置を使用すると、鼻孔(びこう)間距離の拡大、頬骨の張り出し、 顔面の扁平化をまねきます。
顎(がく)顔面がこれだけ変形すると、鼻腔(びくう)容量も拡大し鼻の通りが良くなりますが 容姿の変形など、その代償は大きなものになります。
また、下顎骨(かがくこつ)の拡大は解剖学的に不可能で、拡大されたように見えるのは歯が外側に傾斜しただけで不安定な状態です。
矯正治療をはじめるにあたり、上顎急速拡大装置と下顎骨の拡大には気をつけた方が良いでしょう。
(執筆者紹介/工藤歯科・矯正歯科医院院長)