大動脈狭窄(きょうさく)症
美唄市医師会・佐藤 功

超高齢化時代を背景に大動脈弁狭窄症が増えています。
この病気は大動脈弁の開く面積が狭くなるために起きる病気です。
大動脈弁は大動脈と左心室の間にあり通常は三せん尖から成っており血圧の差で受動的に開いたり閉じたりします。 狭くなる原因としては、@リウマチ性A先天性B動脈硬化性があります。 リウマチ性は減少傾向で、先天性は二せんべん尖弁によるもので全人口の1〜2%の頻度で見られます。
動脈硬化を原因とするものが特に増加しています。
弁が硬化し石灰化を来たし弁の解放が制限されるために起きます。 このため左心室内の圧力は収縮期血圧より高くなります。聴診での心雑音が発見のきっかけであることがよくあります。 診断は心臓超音波検査などで大動脈弁口面積を測定し重症度を判定します。
大動脈弁狭窄症は重症になると1〜2年で心不全死や突然死を引き起こします。
弁狭窄を是正する有効な内科的治療法はありません。 狭くなった大動脈弁を外科的に人工弁に取り替える必要があります。
以前は、外科的に大動脈に人工弁を植え込む手術が多く行われておりました。
近年、カテーテルを用いて胸を切らずに人工弁を留置することが可能となりました。 患者さんの負担は少なくなりましたが、合併症として脳梗塞などが少ないのですが一定の頻度で起こります。 重症になる前に治療することが最も大切です。
高齢者では身体的活動が低いため大動脈弁狭窄症が進行しても心症状を自覚しないことがあります。 早期発見のためには、かかりつけ医師に聴診器を胸にあてていただくことをお勧めします。
(執筆者紹介/北海道せき損センター循環器内科部長・副院長)