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子どもの発達(2) 美唄市医師会・松浦 信夫 |
脳を含めた、全ての組織は、1個の受精卵から分化してきます。受精卵は、細胞分裂を繰り返し、胎芽期(妊娠3週から8週)をむかえます。
この時期は器官形成期といって、脳や、心臓、肝臓に分化する時期です。脳を構成する細胞は、神経細胞(ニューロン)とグリア細胞の2種類です。
出産までに、1000億個の細胞が出来ます。すなわち、胎生期は、脳の材料を作る時期です。 出生後、満3歳までは「三つ子の魂百まで」の時期です。ヒトは、このときのことを記憶することは出来ません。しかし、この時期脳のなかでは、 「髄消化(ずいしょうか)」と「シナプス形成」と言う大きな変化が起こって、脳は急速に大きくなります。満3歳を過ぎると、前頭葉にも同じ変化 が進み、高次脳機能が発達してきます。思いやり、計画性の発達等のように人間らしい行動が出来るようになります。幼稚園の、年中さんのレベルです。 他の哺乳動物では、出産する前に、「髄消化」と「シナプス形成」がほぼ完成し、生まれてすぐに歩行が出来ます。これが出来ないと、他の肉食獣に 食べられてしまいます。 しかし、もしヒトで胎児期にこのレベルまで脳が発達すると、頭が大きくなりすぎ、お腹から出てこられなくなります。 すなわち、二足歩行をとった最も重要な問題はお産の時にあったのです。ヒトは最終的に脳の発達を最優先するために、胎児期は、出来るだけ脳の材料を 沢山作り、かつ頭の大きさをできるだけ小さくして分娩時期を迎えます。そのため、ヒトの赤ちゃんは、他の動物のように出産直後は動けないのです。 虐待がなぜ起こるかは、別の機会にしたいと思います。 (執筆者紹介/市立美唄病院小児科医師) ![]() |