糖尿病の新しいお薬
美唄市医師会・中村 雄一

最近、SGLT2阻害剤という糖尿病の新しい薬剤が処方できるようになりました。これまでの糖尿病治療薬とは 異なり、インスリンを介さず腎臓で作用し、尿中へのグリコース排せつを促進させることにより血糖を低下させる ユニークな薬です。この薬の特性は、低血糖の危険が低く、さらに体重減少作用が認められ、これらの作用には著名な リバウンドがないとされています。そのため、肥満を伴う糖尿病患者さんの血糖と体重管理に有用な可能性があり、 また、1日1回投与なので飲み忘れ防止の効果も期待できます。
しかしその一方で、副作用に十分注意する必要があります。他の糖尿病治療薬との併用時の低血糖の発現や、この薬に 特徴的な多尿・頻尿、口渇・多飲の出現が挙げられます。また、尿中のグルコース濃度が上昇するため、尿路・性器感染症 に注意が必要です。これらの予防には適度な飲水が奨励され、特に夏場の脱水対策に留意が必要となります。
以上のようなSGLT2阻害剤という新たな治療の選択肢が加わることにより、今後はより質の高い血糖コントロールが 可能になることでしょう。その一方、新しい薬ですので、効果と副作用を勘案し、上手に活用する必要があります。 また、糖尿病治療で最も大切なのは、薬物治療ではなく食事・運動療法であることを再認識してください。
血糖コントールに苦慮されている方は、かかりつけ医に相談して改めて治療を検討してもらいましょう。
(執筆者紹介/なかむら内科・消化器内科クリニック院長)