傷には消毒とガーゼが必要なのか?
美唄市医師会・田中 康夫

すり傷や切り傷の処置のため消毒液で消毒してガーゼをあてた経験を持つ人も多いことと思いますが、消毒とガーゼは本当に必要で十分でしょうか。
特殊な状況は別として、すり傷や切り傷を消毒すると化膿が減って早く治るという証拠はありません。化膿の頻度は消毒液を用いても流水で洗浄しても 同程度とされています。逆に、消毒液による刺激で傷の治りが遅くなることが知られています。さらに、ガーゼをあてると傷が早くきれいに治るという 証拠もありません。かえって傷が乾燥してカサブタをつくり見た目が悪くなります。
では、すり傷や切り傷はどのように処置すると良いのでしょうか。 まず、傷を勢いのよい水道水で洗浄します。この時、傷内に異物を残さないことに注意します。十分に水分をとってからフィルムドレッシングで傷を覆います。 これは透明で水蒸気は通過するが、水は通過しない性質を持つポリウレタン、ポリエステルなどのフィルムです。 傷が治るまでなるべく剥がしません。これで終わりです。フィルムドレッシングには、
@湿潤環境を作れること
A安価であること
B比較的容易に入手できること
Cドレッシングを交換せずに傷を観察できること
D使用手技が容易なこと
E外界から水が入らないためシャワーを浴びられることの利点があります。
すでに化膿した傷には用いられない欠点はありますが大変重宝しています。
(執筆者紹介/市立美唄病院外科医長)