入れ歯の話
齋藤 有美

入れ歯を入れている方、これから入れられる方にぜひ知っておいていただきたいことがあります。 このことを知っていれば、きっと入れ歯と上手に付き合えるようになります。
入れ歯を初めて口に入れると違和感を覚える方も多いと思いますが、それは使ってみた方にしか わかりません。私はときどき患者さんにつぎのように説明します。
新しい靴を履いた瞬間はぴったりだと思っても、歩くと靴ずれができることがあります。家にいる ときは靴を脱いで足を休ませますよね。入れ歯も同じで、新しいうちは痛いところが出てくるので 調整をしないといけません。また、夜寝るときは入れ歯を外して歯茎を休ませましょう。外を歩く とき、靴に慣れた方は「靴なしでは歩けない」と言うように、入れ歯に慣れた方も「入れ歯がない と食事ができない」と言うでしょう。慣れは必要ですが、入れ歯があわないときは、面倒でも歯医 者さんで調整してもらいましょう。自分で調整するより劇的に良くなります。
入れ歯をしたときは、まず柔らかいものから食べ、慣れてきたら小さい固まりにして食べてみましょう。 入れ歯が入ると口の中や舌のお部屋も狭くなります。そこにたくさんの食べ物が入ったら、お口の中 がいっぱいになり、飲み込めるものも飲み込めなくなります。「さあ歯が入ったぞ。モリモリ食べるぞ」 は最初からは通用しません。かわいらしくお上品に食べてみて、痛かったら調整してもらうことも 大切です。
(執筆者紹介/北海道中央労災病院せき損センター歯科医師)