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「転倒」を理解する。 美唄市医師会・諌山 治彦 |
高齢になると、関節の動きが鈍ることに加えて踏ん張る力が低下するため、とっさの動きに対応することが
難しく、日常的に転倒が起こりやすくなります。また、骨も脆いため転んだときの衝撃に耐えきれずに
折れることも少なくありません。転んで脚のつけ根などの骨が折れると整形外科で治療しますが、折れた箇所
だけに注目していても歩行状態が改善されないことがしばしまあります。転ぶに至った根本的な原因に働き
かけない限り、日常の活動性を理解して支えてあげることができないのです。 整形外科の分野では、膝の関節の動きや頚・腰の神経の束への影響から脚の筋力が弱っていないかどうかを 診ますが、脳・心血管系の目に見えない変化によっても転倒が引き起こされることもあり、総合的に判断して 治療に当たる必要があります。 高齢者と身近に接することができない家族の中には「運悪くたまたま転んでしまったのね。これから気をつけなきゃね」 という会話を交わしている人もいますが、実際はたまたまではなく、起こるべくして起きていることが多いのです。 高齢者では柔道のような反射的な受身姿勢をとることができません。普段からカラダを柔軟にして、上半身・下半身 の筋力をバランスよく鍛え、場合によってはつえなどの補助具を日常生活に取り入れることも必要でしょう。 診察室では決してとらえることのできない、日常の動きの中で生じる「転倒」という現象(1つの症状)をさまざまな 角度から検討して対策を練ることで、高齢者の活動性の維持・向上に役立てることができると考えています。 (執筆者紹介/市立美唄病院整形外科医長) ![]() |