今、改めてブラッシング
美唄市歯科医師会・小森 英世

歯科の2大疾患であるむし歯(齲蝕)と歯槽膿漏(歯周疾患)は、どちらも外的因子として固有の細菌が原因ですが、清潔を保つことにより 予防できます。また、歯肉炎や軽度の歯周炎は、ブラッシングだけでも治療でき、これらのことは40〜50年も昔から判明しています。
自分の歯を大切に残し清潔に努めること、食べ物を味わい唾液とよく混ぜ飲み込むことは、点滴やチューブによる栄養補給とは大きく異なり 、食べる楽しさや生きる喜びを味わいながら、健康を回復し維持していくことが極めて大事だと再認識させてくれます。
歯ブラシによるブラッシング、フロスや歯間ブラシによる補助的清掃など、自分で考え工夫・努力し、自分の歯が丈夫であることに感謝しながら 、毎日の習慣として実行することは大切です。しかし、ただ漫然として行うのではなく、いわばオーラルセルフコントロールとしてブラッシング を行うことにより、健康を願い、自分自身と見つめ合うという意味では、一見とるに足らぬような行為のようにも見えますが、自身の健康と直結 する崇高な行為とも考えられます。
急速に高齢化が進む今日、自分の歯で長生きする8020社会(80歳以上で20本の歯を有する人が50%を超える社会)達成のために、社会 全体で口腔衛生に努力していくべく、昨年道議会でも「8020推進条例」が制定され、簡単なフッ素洗口による予防も教育の場に取り入れてい こうという積極的な機運もでてきています。
一方歯周病という慢性の炎症状態は全身にも悪影響を与えます。血管の動脈硬化を促し、糖尿病を悪化させるほか、心疾患、脳梗塞との関連が 近年注目されてきており、改めてブラッシングの大切さ、歯牙とその周囲の組織、口腔内を清潔に保つことの大切さが見直されてきています。
(執筆者紹介/小森歯科医院院長)