1次救急処置(BLS)の重要性
美唄市医師会・村田 正喜

私が北海道中央労災せき損センターに赴任して約8ヶ月になりますが、当院で1次救急(BLS)の講習会を行って から、手術室を中心に十数名のヘルスケアプロバイダー(BLSのプロ)が育ちました。いずれは、彼女たちヘルスケアプロバイダー が主導で市民の皆さんへBLSの講習会を行い、全市民がBLSを行うことができればと思い、BLSについて述べさせて いただきます。
なぜBLSが重要かつ必要かというと、傷病者(病人やけが人)が倒れて心肺停止になってからの生存率は、1分ごとに 7〜10%低下すると言われています。しかも最初の5分(3分以内がベスト)が非常に重要で、この間にBLSを行えば 生存率を2〜3倍に上昇させることが分かっています。
東京マラソンでタレントの松村邦洋さんが、走っている最中に心筋梗塞のため心肺停止状態になりましたが、周囲の迅速なBLSの おかげで後遺症なく復帰したことをご存じの方もいるでしょう。彼は、心肺停止からすぐに心臓マッサージと除細動を行われ助かった のです。仮に、周囲の人が救急隊が到着するまで何もしていなかったなら、彼は助からなかったかもしれません。なぜなら、傷病者を 発見してから救急隊が到着するまで、平均7〜8分かかる(場所によっては当然もっとかかる)ため、彼の生存率は20%にも満たなかった からです。
救急隊が医療機関に搬送し、我々がどんなに高度な医療処置を施しても、BLSには勝てないのです。
傷病者を助けたいという思いで一生懸命行うBLSは誰でもできますし、かつ傷病者の生存率を上昇させる最良の手技なのです。 そのためにBLSは大事なのです。
当院でもまだBLSが十分浸透しているとは言えませんが、まずは当院全職員から、そして全市民のみなさんへ還元できればと思っています。
(執筆者紹介/北海道中央労災病院せき損センター麻酔科副部長)