乳がん検診について
美唄市医師会・川村 典生

今夏は、映画「余命1ヶ月の花嫁」の公開や歌手・川村カオリさんの訃報など、若年乳がんに関する 注目が高かったように思います。「がん」といえば一般的に高齢者の病気というイメージが強いかも しれませんが、その例外の1つが乳がんです。
乳がんの罹患率は35歳前後から上昇し50歳前後でピークを迎える、比較的年齢層の低いがんと いえます。2000年の統計では、年間3万5000人の方が新たに乳がんと診断されており、年間 1000人ペースで増え続けると推測されています。これは人口10万人あたり約30人、美唄市の 女性人口1万4000人に換算すると、年間4人前後の方が新たに乳がんに罹患していることになります。 乳がん生存率はほかのがんと比較すると良好ですが、全乳がん患者のうち約30%ががんの転移により 死亡しています。
このように、日本では乳がんの罹患率・死亡率のいずれも上昇傾向にありますが、欧米では若干事情が 異なります。罹患率の上昇傾向は同様なのですが、死亡率は減少傾向にあります。なぜこのような違いが 生じているでしょうか?
その1番の理由が、乳がん検診の受診率です。乳がんもほかのがんと同様に、早期発見・早期治療により 治療成績が向上します。早期がんでは10年生存率が95%以上と、非常に良好な治療成績が得られます。 この早期発見のために重要なのが乳がん検診です。
現在、乳がん検診では「マンモグラフィ」という乳腺専用のレントゲンを撮りますが、このマンモグラフィ 検診を1〜2年に1度受けることによる死亡率の減少は、40歳代で23〜45%、50歳代で17〜30% といわれています。
乳がんの発見に、非常に有効なマンモグラフィ検診なのですが、日本での受診率は非常に低く、乳がん 年齢の女性の11%程度しか受診していません。これに対し、欧米では約80%の女性が受診しています。 この受診率の差が、欧米と日本の乳がん死亡率の格差の1つと考えられています。 ご自身の健康と家族のためにも、1〜2年に1度のマンモグラフィ検診の受診をお勧めします。
(執筆者紹介/市立美唄病院外科医長)