人工膝関節とは?
美唄市医師会・渡辺 隆洋

膝関節の軟骨がすり減って痛みが生じる「変形性膝関節症」という病気があります。軽いものは 薬や関節注射で治療しますが、病状が進むとあまり効果がなく、痛みのため立ち座りや歩行が 困難になります。壊れた軟骨は再生しないとも言われており「人工膝関節置換術」という手術治療 が行われます。これがどんな手術なのか、患者さんやご家族からよく聞かれる点を簡単にまとめ ました。
関節の壊れてしまった部分を切除し、金属製の人工関節(上下2個)を骨セメントと呼ばれる 接着剤で骨に固定し、関節を滑らせる働きをするポリエチレンの部品を挟みます。 規模はだいぶ違いますが、痛んだ歯を削って金属をかぶせる、歯科の治療をイメージしていただくと 良いでしょう。通常は全身麻酔で行い、手術時間は2〜2時間半くらいです。 手術後1週ころから歩く訓練を開始し、2〜4週で杖を使って歩けるようになります。 通常1〜2ヶ月程度の入院が必要です。
この手術の最大の利点は痛みの軽減で、ほとんどの方は痛みがなくなるか著しく軽減します。 欠点としては、膝の曲がりは構造上100度くらいに制限されるため、正座や深くしゃがむことはできません。 また、人工膝関節の耐用年数は20年くらいといわれており、ゆるみや摩耗などが生じた場合、入れ替える 手術が必要となります。手術後は半年〜1年に1度程度の定期的なレントゲン検査が必要です。
生命にかかわる病気ではありませんが、痛みがなく歩けることは生活の質を大いに高めます。膝の痛みで長年 困っておられる方は整形外科医に相談してみてはいかがでしょうか?
(執筆者紹介/北海道中央労災病院せき損センター整形外科副部長)