転んで寝たきりにならないために
美唄市医師会・渡辺 隆洋

「大腿骨頸部骨折」は、太もものつけ根の骨折です。年配の方が転倒で受傷することがほとんどで、国内で年間約 10万人の方が受傷しており、高齢化に伴い年々増加しています。 受傷すると強い痛みのために立つことはおろか、座ることもままなりません。ほとんどの場合、寝たきりを防ぐ ため手術が行われますが、骨折する前より歩くのがうまくなる方はまずいません。 もともと普通に歩けた方でも4割が骨折後何らかの介助を必要とするか歩行不能になるといわれています。 また、寝たきりの原因となることが多く、脳卒中に次いで第2位を占めています。肺炎、褥瘡(床ずれ)などの 合併症で生命にかかわることも少なくありません。 原因として骨がもろくなる「骨粗しょう症」の関与が大きく、この治療(薬物療法、食事、運動など)はもちろん 重要ですが、自宅でできる予防法で簡単かつ重要なのは転倒の予防です。転倒して骨折というと多くは屋外で 起きると思われるかもしれませんが、7割が家の中で起こっています。手すりや杖の使用、つまずきやすいもの (床に置いてあるもの、スリッパ、めくれやすいカーペットなど)を改めて見直すことが予防に効果的です。 手すり代わりに家具などにつかまって歩く方もおられますが、不安定なもの(軽いもの、動かせるキャスター付き の家具など)だとかえって転倒の原因となることがあり、注意が必要です。 寒さで体が縮こまっているこの時期、ご自宅が「転びやすい家」になっていないか、今一度見直してみては いかがでしょうか?

(執筆者紹介/美唄労災病院整形外科副部長)