胃ろうについて

美唄市医師会・木村 慶太

みなさんは、胃ろうを知っていますか。これは胃カメラを飲んでみぞおちから、胃に管を通して口から入る食事のかわりに 栄養補給を行う方法のことを言い、比較的単純な方法で、数十年前から行われています。 これを行うのは認知症が進んで食事が進まなくなった人、脳梗塞で自分で飲み込みができなくなった人、口から食事すると 肺炎ばかり起こす人などに処置することが多いもので、栄養補給には大変有効な方法です。 しかし、いつも苦慮するのは、これを行うことが患者さんにとって最善の方法なのかということです。 点滴は医療行為ですが、胃ろうからの栄養というのは家族が行うこともできる医療と介護の中間にあたるような行為です。 そして、胃ろうを作る方はほとんどが寝たきりの状態で在宅の介護は大変であり、家族は施設介護を望むことが多いのです。 現状では胃ろう患者さんを受け入れてくれる施設は少なく、ほとんどが療養型施設に入ります。 ところが日本では38万床の療養病棟のベッドを16万床に減らそうという目標だそうです。国の施策はさておき、皆さん には一度食べられなくなったときどうするか、考えて家族で話し合って欲しいものです。 胃ろうもなかった昔、人間は食べられなければそのときが死ぬときだったはずです。胃ろうを作って栄養補給をするという ことは、口から食べなくても死なないという状況が続くことなのです。 もし、仮に自分が脳梗塞で話ができなくなったり、食べられなくなったとき、どうしたらよいか考えておくことも大切なの ではないでしょうか?
(執筆者紹介/市立病院内科医師)