膝の水を抜くと癖になる?

美唄市医師会・酒井俊彦

外来で膝に水がたまっている患者さんに水を抜くことを勧めますと、「膝の水を抜くと癖になると言いますけど」 とよく聞かれます。これは本当でしょうか?間接に水がたまることを関節水症といいますが、これは関節の中に 大量の関節液がたまっている状態です。関節液は関節の中にある滑膜で作られ、滑膜で吸収されますが、何らかの 原因で滑膜に炎症が起きますと関節液が過剰に作られ、関節水症が発生します。炎症を起こす原因はいろいろあり ますが、代表的な病気は関節の軟骨がすり減り変形してくる変形性関節症です。 「水を抜くと癖になる」という言葉は、おそらく水を抜いても数日の間にまたすぐ水がたまってしまう状態を指して 、昔から言われてきたものだと思います。抜いた後すぐに水がたまってしまうのは、前述でしたように関節(滑膜) の炎症がまだ治まっていないからであって、つまりは炎症を起こす原因と病気がまだ十分に治療されていないことを 表します。また、水を抜いて膝の痛みが楽になったため、つい膝を使いすぎて炎症が強くなるということも関節水症 を繰り返す原因として考えられます。決して関節から水を抜くという行為自体が関節液をたまり易くさせるのでは ありません。膝の関節水症は、膝のはった感じ、動作時の痛み、関節の動きを悪くするなどの原因となります。 決して癖にはなりませんので、関節の水を抜き、ヒアルロン酸製剤などの薬物を関節内に注入して炎症を抑える 治療を行ってみてはいかがでしょうか?
(筆者紹介/美唄労災病院整形外科部長)