千里の道も一歩から
〜ロボットと行う新しいリハビリテーションとは〜

美唄市医師会・松本 聡子

「再生医療」という言葉を最近よく耳にします。元に戻らないと思われた体の一部を、科学の力で新しく作り直す医療技術です。 夢物語が現実になる日が近づいていますが、脊髄(せきずい)損傷で現在訓練中の方たちに恩恵がもたらされるまで、もう少し時間が必要です。 その時まで、そして脊髄再生医療の効果を高めるためにも、地道なリハビリテーションを毎日続けていくことがとても大切です。
その再生医療の実現より先んじて、すでに「ロボット」がリハビリに登場しています。
ロボットのような機械で上手に動かない筋肉を刺激して、機能を改善させる訓練が始まっています。
当院でも、日本で開発されたロボットスーツ「HAL」を脊損患者さんの訓練に使っています。筋肉が動くときのごくわずかな電気を感知して、 歩く動作を再現します。自分で立てない方は、体をつり上げる歩行器も使います。2本の足で立つ・歩くという人間の基本的な動作は、 内臓の働きを維持するためにも重要だからです。しかし、これだけでは十分ではありません。 一人ひとりに合わせた従来通りの訓練を、理学療法士・作業療法士と一緒に毎日繰り返すことで、体の機能を高め家庭や学校・職場への復帰が可能になるのです。
千里の道も一歩から。積み重ねが新しい自分を作ります。皆さんも、ご自分で無理なくできる訓練を毎日続けてみてください。きっと明日は変わるはずです。
(執筆者紹介/北海道せき損センターリハビリテーション科部長)